加害生徒の保護者に内容証明を送るとは?
いじめの被害が続いているにもかかわらず、学校への相談だけでは状況が変わらない。
そのような場合に、「相手の保護者にも、こちらの状況や希望する対応をきちんと伝えたい」と考える保護者の方もいます。
その方法の一つが、加害生徒の保護者宛てに内容証明郵便を送ることです。
内容証明は、相手を強制的に動かすための制度ではありません。
いつ、誰から、どのような内容の文書が送られたのかを明確に残しながら、こちらの意思を正式な書面で伝える方法と考えると分かりやすいでしょう。
本記事では、
- 相手側保護者に内容証明を送ることを検討する場面
- どのような内容を書けばよいのか
- 書面を作成するときの注意点
- 行為の停止・再発防止・話し合いを求める文例
について、行政書士の立場から一般的な情報として解説します。
加害生徒の保護者に内容証明を送ることを検討する場面
相手側保護者に直接書面を送ることが適切かどうかは、いじめの状況や、これまでに学校などへ相談した経緯によって異なります。
「内容証明を送れば必ず解決する」というものではないため、まずはなぜ相手側保護者に書面を送る必要があるのかを整理することが大切です。
学校への相談だけでは状況が変わらない場合
学校に相談したものの、いじめと考えられる行為が続いている場合には、相手側保護者に対して、こちらが把握している事実や希望する対応を文書で伝える方法を検討することがあります。
この場合も、
「相手を責めること」ではなく、「何が起きていて、何を求めているのかを明確に伝えること」
を意識することが重要です。
学校外での行為について伝えたい場合
SNS、放課後、地域活動など、学校の外で発生している行為について、相手側保護者に直接伝える必要が生じる場合もあります。
ただし、学校外で起きたことだからといって、学校との関係がなくなるとは限りません。
状況に応じて、学校への相談と相手側保護者への通知を分けて考える必要があります。
口頭ではなく書面で意思を明確にしたい場合
これまで口頭で伝えてきたものの、
- 何を伝えたのか曖昧になっている
- 相手側と認識が食い違っている
- こちらの希望する対応を整理して伝えたい
という場合には、書面にまとめることに意味があります。
内容証明を利用することで、どのような内容の文書を送ったのかを記録として残すことができます。
内容証明を送れば、相手の親に謝罪させられる?
ここは、内容証明を検討する際に誤解しやすいポイントです。
内容証明は、相手に対して一定の行為を強制する制度ではありません。
したがって、
「内容証明を送れば、必ず謝罪してもらえる」
「内容証明を送れば、いじめが必ず止まる」
というものではありません。
内容証明でできることは、主としてこちらの認識や意思、希望する対応を文書で明確に伝えることです。
そのため、書面を作成するときには「相手を追い詰める文章」よりも、
何が起きたのか → 何を伝えたいのか → 何を求めるのか
を整理することが重要になります。
加害生徒の保護者宛て内容証明に書く内容
内容証明の文面は、できるだけ簡潔に整理します。
基本的には、次の4点を意識すると分かりやすくなります。
①事実関係を整理する
最初に、問題となっている行為について整理します。
例えば、
- いつ起きたのか
- どこで起きたのか
- どのような言動・行為があったのか
- 子どもにどのような影響が出ているのか
などです。
ここでは、確認できている事実と、推測・評価を区別することが重要です。
「絶対にこういう目的だった」と相手の意図まで断定するのではなく、確認できている出来事を具体的に書くようにします。
②こちらが求める対応を整理する
次に、相手側保護者に何を求めるのかを記載します。
例えば、
- 今後同様の行為を行わないよう家庭での指導をお願いする
- 再発防止について話し合う
- 事実関係について確認する機会を設ける
- 必要に応じて謝罪について話し合う
などがあります。
要求を増やしすぎるのではなく、今回の通知で何を伝えたいのかを絞ることが大切です。
③回答を求める場合は期限を明確にする
相手側保護者からの回答を希望する場合には、
「本書面到達後○日以内」
など、回答期限を明確にする方法があります。
期限を設けることで、いつまでに回答を求めているのかが分かりやすくなります。
④今後の連絡方法を明確にする
相手側保護者からの連絡を希望する場合には、電話、書面など、希望する連絡方法を明記することもできます。
ただし、相手との直接のやり取りによって状況が悪化するおそれがある場合には、無理に直接連絡を取る必要はありません。
内容証明に書かないほうがよい表現
相手側保護者への通知では、感情が強くなってしまうことがあります。
しかし、書面では感情的な表現や、確認できていない事実の断定を避けることが重要です。
例えば、次のような表現には注意が必要です。
- 相手の人格を否定する表現
- 確認できていない事実を断定する表現
- 「絶対に許さない」など、感情的な表現
- 刑事責任などを安易に断定する表現
- 相手を威圧することを目的とした表現
内容証明だから強い言葉を使う必要があるわけではありません。
むしろ、事実と希望する対応を落ち着いて整理することが重要です。
加害生徒の保護者宛て内容証明の文例
ここでは、一般的な構成例を紹介します。
実際には、いじめの内容、これまでの学校とのやり取り、子どもの状況などによって文面を調整する必要があります。
①行為の停止・再発防止を求める場合
(題名)いじめ問題に関する通知書 受取人 (相手側保護者の住所) ○○○○ 殿 差出人 住所 氏名 貴殿のご子息(ご息女)について、令和○年○月頃より、当方の子に対し、以下のような行為が確認されています。 ・令和○年○月○日 ○○において○○と言われた ・令和○年○月○日 SNS上で○○という内容が送られた ・その他、○○等の行為があった これらの行為により、当方の子は○○などの影響を受けています。 当方としては、これ以上同様の行為が行われることを望んでおりません。 つきましては、今後同様の行為が行われないよう、ご家庭においてもご指導いただきますようお願いいたします。 また、本件についての今後の対応について、本書面到達後○日以内に書面にてご回答いただきますようお願いいたします。 以上
②事実確認や話し合いを求める場合
(題名)いじめ問題に関する通知書 受取人 (相手側保護者の住所) ○○○○ 殿 差出人 住所 氏名 貴殿のご子息(ご息女)について、令和○年○月頃より、当方の子に対し、○○等の行為があったと認識しております。 当方の子は、これらの行為により○○のような状況となっています。 当方としては、感情的な対立を望んでいるものではなく、まずは事実関係を確認したうえで、今後同様のことが起こらないよう対応することを希望しております。 つきましては、本件について話し合う機会を設けることについて、本書面到達後○日以内にご回答いただきますようお願いいたします。 以上
③謝罪について話し合いたい場合
(題名)いじめ問題に関する通知書 受取人 (相手側保護者の住所) ○○○○ 殿 差出人 住所 氏名 貴殿のご子息(ご息女)について、令和○年○月頃より、当方の子に対し、○○等の行為があったと認識しております。 当方の子は、これらの行為により○○のような影響を受けています。 当方としては、相手側を一方的に責めることを目的としているものではありません。 本件について事実関係を確認するとともに、今後の再発防止や謝罪について話し合う機会を設けたいと考えております。 つきましては、本書面到達後○日以内に、話し合いについてのご意向を書面にてご回答いただきますようお願いいたします。 以上
内容証明を送った後、相手側保護者から反論されたら?
内容証明を送った後、相手側保護者から、
- 「そのような事実はない」
- 「こちらの子どもは悪くない」
- 「逆にこちらが迷惑を受けている」
などの反論が届くことも考えられます。
この場合、すぐに感情的な反論を返すのではなく、相手が何を否定しているのか、こちらが確認できている事実は何なのかを整理することが大切です。
相手との間で具体的な権利義務をめぐる紛争になっている場合には、行政書士による書面作成だけで解決しようとせず、弁護士への相談も検討してください。
相手側保護者が内容証明を無視したら?
内容証明を送ったからといって、相手側保護者に回答義務が発生するわけではありません。
相手から回答がない場合でも、こちらがどのような内容を通知したのかを記録として残すという意味はあります。
内容証明は、文書の内容を証明する郵便の制度です。日本郵便の約款でも、内容証明は郵便物の内容である文書について証明する取扱いとされています。
そのため、
「返事がなかった=内容証明を送った意味がなかった」
とは限りません。
ただし、その後にどのような対応を取るかは、いじめの状況や相手側の対応などによって変わります。
学校・教育委員会宛ての内容証明との違い
加害生徒の保護者宛ての通知と、学校・教育委員会宛ての通知では、伝える相手と目的が異なります。
→ 相手側保護者に対して、事実やこちらの希望する対応を伝える。
→ 学校に対して、これまでの経緯や希望する対応を文書で伝える。
教育委員会宛て
→ 教育委員会に対して、学校への相談経緯や対応状況などを伝える。
どこに通知するかは、単純に「一番強い方法」を選ぶということではありません。
現在どこまで相談しているのか、誰に何を伝える必要があるのかを整理して判断することが重要です。
行政書士に内容証明の作成を依頼する場合
内容証明は、文章の内容だけでなく、
- 事実関係をどのように整理するか
- 何を相手に伝えるのか
- どこまでを要求として記載するのか
- 感情的な表現をどのように整理するか
といった点も重要になります。
行政書士は、依頼者から事情を伺い、事実関係や希望する内容を整理して書面にまとめるという形で支援できます。
一方、具体的な損害賠償請求や、相手との間で紛争が発生している場合など、弁護士による対応が適切な場面もあります。
そのため、内容証明を作成する前に、自分が何を伝えたいのか、何を求めているのかを整理しておくことが大切です。
加害生徒の保護者宛て内容証明についてよくある質問
Q1.内容証明を送れば、相手の親は謝罪してくれますか?
内容証明を送ったことだけで、相手側保護者に謝罪を義務付けることはできません。
内容証明は、こちらの意思や希望する対応を文書で伝えるための方法です。
謝罪を希望する場合も、まずは何について謝罪を求めるのか、今後どのような対応を希望するのかを整理して記載することが大切です。
Q2.学校を通さず、相手の親に直接送ってもよいですか?
一律に決められるものではありません。
学校への相談状況、いじめが発生している場所、相手側保護者とのこれまでのやり取りなどによって、適切な対応は異なります。
学校との連携が必要なケースでは、相手側保護者への通知だけで解決しようとせず、学校への相談も並行して検討します。
Q3.内容証明を無視されたらどうなりますか?
内容証明を受け取ったことだけで、相手側保護者に回答義務が発生するわけではありません。
ただし、どのような内容を通知したのかを記録として残すことはできます。
その後の対応については、状況に応じて学校や教育委員会への相談、専門家への相談などを検討します。
Q4.相手から反論が来たら、すぐに返事をしたほうがよいですか?
必ずしもすぐに返事をする必要はありません。
相手側の主張を確認し、こちらが把握している事実と照らし合わせてから、今後の対応を考えることが大切です。
具体的な権利義務をめぐる紛争となっている場合には、弁護士への相談も検討してください。
加害生徒の保護者に内容証明を送る前に確認したいこと
最後に、送付前に次の点を確認しておきましょう。
- 何が起きたのかを時系列で整理できているか
- 確認できている事実と推測を区別できているか
- 相手側保護者に何を伝えたいのか明確になっているか
- 希望する対応が具体的になっているか
- 感情的・侮辱的な表現が入っていないか
- 学校や教育委員会への相談状況と矛盾していないか
内容証明は、強い言葉を書くためのものではありません。
「何が起きたのか」「何を伝えたいのか」「今後どうしてほしいのか」を整理し、相手側保護者に落ち着いて伝えるための書面として利用することが重要です。
いじめ問題でお悩みの保護者の方へ
学校に相談しても対応してもらえない、相手側保護者との話し合いが進まないなど、いじめ問題では「次に何をすればよいのか分からない」という状況になることがあります。
ひまわり行政書士事務所では、いじめ問題に関するご相談を受け付けています。
状況をお聞きしたうえで、要望書や内容証明などの書面による対応が必要かどうかも含めてご案内します。
- 相談は無料
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すぐに対応を進めたい方は、こちらから直接ご依頼いただくことも可能です。