加害生徒の保護者宛てに送る内容証明とは
いじめ被害が継続しているにもかかわらず、学校で十分な対応がなされない場合や、学校外で発生しているいじめについては、加害生徒の保護者宛てに内容証明郵便を送付するという選択肢があります。
これは感情をぶつけるための手段ではなく、事実関係を整理して法的に正当な形で行為の是正や解決を求めるための方法です。
本記事では、行政書士の立場から
1、どのような場合に有効なのか
2、書くべき内容と注意点
3、ケース別のミニ文例
を分かりやすく解説します。
加害生徒の保護者宛てに内容証明を送るのはどんな場合か
「相手の親に直接伝えるなんて、やりすぎではないか」――そう悩む方も少なくありません。
しかし、状況によってはそれが子供を守るための現実的な選択になる場合もあります。
以下に加害生徒の保護者宛てに内容証明を送付するケースについて解説していきます。
学校の対応だけでは改善が見られない場合
学校や校長に相談しても、注意や指導が形式的で、いじめ行為が止まらないケースがあります。そのような場合、加害生徒の保護者に直接、法的な文書で状況を伝えることにより、対応が進むことがあります。
学校外でのいじめが発生している場合
SNS、放課後、地域活動など、学校の管理外で行われるいじめについては、学校や教育委員会の対応に限界があります。このようなケースでは、私人間の問題として保護者宛てに通知する方法が現実的です。
謝罪・行為停止・再発防止を明確に求めたい場合
口頭でのやり取りでは曖昧になりがちな要求も、内容証明郵便で送付することで、要求内容と時期を明確に記録できます。
相手側に対して正式な申し込みをする場合には、しっかりとした記録を残す事が何より大事になります。
加害生徒の保護者宛て内容証明の法的な位置づけ
加害生徒の保護者宛てに内容証明を送付する場合、しっかりとした記録を残す事が大事と説明していますが、子供のいじめ被害を思って感情的になり、相手側の保護者に対して強い言葉を使ってしまう場合があります。
そうなると、相手側保護者に対する脅迫や名誉棄損になってしまう可能性がありますので、この様なリスクを避ける為に「加害生徒保護者への内容証明の位置づけ」が必要になります。
親の監督責任が問題となる場合がある
民法では、未成年者が不法行為を行った場合、親権者等の監督義務者が責任を負う可能性があります(民法709条・714条)。
内容証明はこれらの責任を直ちに断定するものではありませんが、事実関係を整理し、責任が生じ得ることを冷静に伝える手段として用いられます。
刑事手続ではなく、あくまで民事的手段
内容証明は「罰する」ためのものではなく、相手側保護者に対していじめ被害の抑止、いじめ被害を受けた事に対する正当な主張になります。
なので、あくまで被害の拡大を防ぎ、解決を図るための民事的アプローチとなりますので、決して感情的にならずに事実関係を明確に主張しましょう。
加害生徒の保護者宛て内容証明に記載すべき内容
実際に子供のいじめ被害を踏まえて、相手側保護者に対して内容証明を送付する事を検討している場合に、内容証明の中に何を記載するべきなのか詳しく見ていきましょう。
➀事実関係の整理
学校で起きたいじめを加害生徒の保護者に対して知らせる(止めさせる)為には、事実関係の整理が必要になります。
記載するべき内容は以下の通り、
1、いついじめが起きたのか
2、どこでいじめが行われたのか
3、どんないじめが行われたのか
4、いじめによってどんな被害を受けたのか
上記の内容を確認できている範囲で事実を列挙、感情的にならずにまとめていきます。
➁求める対応・要求内容
上記の「➀事実関係の整理」で確認できた内容について、どの様な事を求めていきたいのかを記載します。
考えられる内容としては、
1、当該いじめ行為に対しての差し止め
2、再発防止に関する対応の要求(誓約書にサインなど)
3、必要に応じて謝罪や話し合いの要求
主な要求として上記の内容が考えられますが、どの要求に対しても共通して「現実的かつ具体的に記載」する事が重要になります。
③回答期限を設ける
学校で起きたいじめに対して事実関係の整理ができて、求める対応・要求内容が明確になったのなら、その対応・要求に対して回答期限を必ず設けるようにしてください。
回答期限を設けないといつまでもこちらが求めた対応・要求が実施されない為、必ず回答期限を設ける様にしてください。
内容証明に書いてはいけないNG表現
前述した様に相手側保護者に対して感情的な言葉を使うと、脅迫や名誉棄損などといったリスクを負いかねません。
●「必ず法的責任を負う」などの断定表現
●刑事告訴や逮捕を安易に示唆する記載
●侮辱的・感情的な言葉
具体例として上記の様な言葉や表現は、逆にトラブルを拡大させる原因となる為、言葉の使い方は特に注意が必要です。
加害生徒の保護者宛て内容証明のミニ文例(行政書士監修)
ここでは、相手側保護者に対して内容証明を送る際のケース別にミニ文例を掲載しています。
そのままWordにコピー&ペーストする事が可能ですので、是非参考にしてください。
※以下はあくまで構成例です。実際の送付にあたっては個別事情に応じた調整が必要ですので、文面に対して不安がある場合には専門家へご相談ください。
➀いじめ行為の停止を求める場合
(題名)いじめ問題に関する是正要請書(中央揃え)
受取人
(相手側保護者の住所)
○○○○ 殿
差出人
住所
氏名(児童生徒〇年〇組〇〇の保護者)
貴殿のご子息(ご息女)による行為につき、令和○年○月頃より、当方の子に対し、継続的ないじめと受け取られる言動(どんないじめなのか詳細を記載する)が確認されております。
本書は、当該行為の事実関係をお知らせするとともに、今後同様の行為が行われないよう、適切なご指導をお願いするものです。
当方としては、本件が円満に解決することを希望しております。
本書面到達後〇日以内に、今後の対応について書面でのご回答をお願い致します。
もし、本書面到達後〇日以内に今後の対応について書面でのご回答が無い場合や誠意ある対応がなされない場合には、今回のいじめについて弁護士に相談の上、然るべき対応について検討を進めて参りますのでご承知ください。
以上
※今回の内容証明の内容については、いじめの内容(確認できた内容)について相手側保護者へいじめの差し止めを要求するもので、相手側に対して制裁を求める内容ではありません。
※併せて回答する期日を設定して、相手側保護者に対して「事の重大さ」を知ってもらう流れにしています。
➁損害賠償請求を行う場合
題名)いじめ問題に関する通知書(中央揃え)受取人
(相手側保護者の住所)
○○○○ 殿
差出人
住所
氏名(児童生徒〇年〇組〇〇の保護者)
貴殿のご子息(ご息女)による行為につき、令和○年○月頃より、当方の子に対し、継続的ないじめと受け取られる言動(どんないじめなのか詳細を記載する)が確認されております。
このいじめによって当方の子には○○(いじめによって受けた被害、例えば不登校が長期化してしまった事やケガで入院などしてしまった事等)という被害を受けております。
いじめは民法上の不法行為に該当する可能性があると考えており、今回発生した損害について慰謝料請求を行い、協議の上、解決を図りたいと存じます。
(※入院費や治療費その他慰謝料等として具体的な金額が明確になっている場合)
「今回発生した損害については、○○に○○円、○○に○○円が発生しており、精神的苦痛として○○円、併せて○○円を請求致します」と記載
つきましては、本書到達後○日以内にご連絡をいただけますようお願い申し上げます。
可能な限り穏便な解決を希望しておりますが、万が一、本書到達後〇日以内にご連絡頂けなかった場合や誠意ある回答ではない場合には、今回受けたいじめの被害について弁護士に相談の上、法的対応を視野に入れて対応を検討して参りますのでご承知下さい。
以上
※損害賠償金額を記載していますが、あくまでも確認できた損害や判明している金額に対して明記するようにしてください(事実に基づき)。
※個別具体的に金額の設定ないし記載については慎重な判断が必要になりますので、専門家への相談を実施する様にしてください。
③謝罪を求める、話し合いを希望する場合
題名)いじめ問題に関する通知書(中央揃え)受取人
(相手側保護者の住所)
○○○○ 殿
差出人
住所
氏名(児童生徒〇年〇組〇〇の保護者)
貴殿のご子息(ご息女)による行為につき、令和○年○月頃より、当方の子に対し、継続的ないじめと受け取られる言動(どんないじめなのか詳細を記載する)が確認されております。
当方の子には受けたいじめの被害により精神的な苦痛を受けておりますが、本件について感情的な対立を望むものでは無く、子供のこれからの為に迅速な解決を求めるものであります。
今後の関係を考慮して、事実関係の確認のもと、謝罪及び再発防止の内容について話し合いの機会を設けたいと考えております。
つきましては、本書到着後〇日以内に謝罪及び再発防止の内容について応じるか否かを書面にてご連絡頂きます様お願い致します。
万が一、本書到着後〇日以内に当方までにご連絡頂けない場合や誠意ある回答ではない場合には、弁護士に本件の対応を相談の上、法的対応を視野に入れて検討を進めて参りますのでご承知ください。
誠意ある対応を頂けますと幸いです。
以上
※いじめの被害や時系列を明確にした上で、期日内に回答が得られない時には、毅然とした対応を進める旨記載してください。
学校・教育委員会宛て内容証明との違い
実際に子供にいじめの被害があった場合、相手側保護者や学校・教育委員会のうち、どこに内容証明を送付するべきなのか分からない場合もあるでしょう。
簡単に説明すると、加害生徒の保護者宛ては「私人間での事実関係整理ないし対応要請」となり、学校や教育委員会宛ての内容証明は「公的機関に対する対応要請」になります。
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行政書士に依頼するメリットについて
行政書士は表現の調整やリスク回避、併せて段階的対応の判断において、
●感情を排した文面整理
●法的に問題のない表現の選別
●今後の対応(弁護士相談等)を見据えた設計
上記の内容について実務的な支援が可能です。
内容証明は自分の意志を法的文書に載せて、相手側へ通知する正式な書面になりますので、今回の記事がお役になれば幸いです。
相手側保護者宛ての内容証明 良くある質問(FAQ)
実際に相談を受ける中で、多くの方が同じ疑問を抱えています。
ただ、「これ以上状況が悪くならないようにしたい」――その気持ち自体が、すでに十分に正当なものであり、以下によくある質問を挙げていますので参考になれば幸いです。
相手の親との関係が悪化しませんか?
適切な文面であれば、感情的な対立を避けつつ問題提起することが可能です。
ただ、その為には事実ベースで記載して「感情的な言葉」を使わない様にしましょう。
逆に訴えられる可能性はありますか?
上記の「相手の親との関係が悪化しませんか?」に記載している通り、事実ベースで内容を記載しているので訴えられるリスクは低いです。
また、言葉の使い方や表現の仕方に注意して、相手側に脅迫や名誉棄損と受け止められない様に気を付ける事によって、さらにリスクは低くなります。
相手側保護者から逆にクレームや反論が来ることはありますか?
一定数の反論は来ることはあります。
ただ、前述の通り「事実ベース」「冷静な表現」「合理的な要求」の範囲に留めておけばクレームになっても法的なリスクは低いです。
また、クレームや反論の内容から相手側保護者の監督責任がなされているのかの判断材料になる場合もありますので、クレームや反論を受けてからの対応については弁護士へご相談ください。
相手側の保護者が内容証明を無視した場合、どうなりますか?
内容証明は郵便局で「送付した文章の内容」と「誰が送付したのか」「いつ送付・受取人に届いたのか(オプション設定必要)」を証明する制度です。
相手側保護者が送付した内容証明を無視した場合、「無視した事実・受取拒否した事実」と「内容証明を出した事実」は残りますので、前述の様に相手側保護者の監督責任が為されているのかの判断材料になる場合があります。
後の対応(学校や教育委員会、弁護士等)の布石になりますので、無視されたから失敗という訳ではありません。
自分で作成すべきか、専門家に任せるべきか迷ったら
ひまわり行政書士事務所ではいじめに関する相談(年間3~400件)や書面作成(年間100件前後)を行っている実績を基に、いじめの被害状況に合わせた内容証明を作成致します。
また、事案ごとに適切な表現や進め方は異なりますので、まずは状況整理から一緒に行うことも可能です。
●自分で作ったけど、文章に問題ないか不安
●どこに内容証明を送付すれば良いのか分からない
●できるだけ穏便に対応を進めたい
上記の様な疑問や不安などあれば、作成した内容証明のチェックも行っておりますので、お気軽にお問い合わせください。
