いつもご覧頂き、ありがとうございます。
ひまわり行政書士事務所の佐藤と申します。
今回お伝えする内容は「内容証明」をキーワードに、いじめの被害を学校や加害者へ通知した際の効力について紹介していきます。
そもそも内容証明とは何なのか!?内容証明についてこちらの記事でまとめていますので、こちらの記事もご覧いただければ幸いです。
※内容証明について簡単にまとめていますので、一度ご覧ください
いつもご覧頂き、ありがとうございます。 ひまわり行政書士事務所の佐藤と申します。 今回お伝えする内容は、「いじめの被害」をキーワードに、学校やいじめ加害者に対して内容証明を送付するメリットについてご紹介致します。 我が子が[…]
内容証明の効力について
内容証明とは「郵便法」で「どんな事が書かれているのか?」を証明してくれる郵便サービスの事であり、普段の生活ではあまり馴染みのないサービスです。
しかし、誰かと何か約束をする場合には、口約束だけではその約束を証明する事ができず、後のトラブルに巻き込まれる危険性があります。
こういったトラブルを避ける為に、内容証明サービスを利用する事によって約束の内容を書面として残すだけでなく、郵便認証司による「承認」によって約束事をキッチリ証明する事が可能となります。
いじめが発覚した時に内容証明を使うと...
では、いじめが発覚した時に学校や加害者に内容証明を送ったらどの様な効力が発生するのか?
まず最初に考えられるのが、「いじめの被害を証明する事」「相手(学校や加害者)に心理的圧力を与えられる」「いじめに関する時系列が明確になる」等の以上の様な効力があります。
さらに細かく見ていくと、次の様な効力も発生します。
- 内容証明を送付してからも学校や加害者の改善が見られない場合には、「学校の安全配慮義務」や「保護者の監督義務」が守られていない事を証明
- 内容証明を送付する事によって「いじめの被害を受けた時期」が証明される事になり、不登校などになった時の「いじめの重大さ」も同時に証明する事が可能
学校の安全配慮義務と保護者の監督義務が守られていない事の証明
学校には子供(生徒)が安全で健康に学生生活を送ることができるように配慮するという義務を負っています。
この義務を守らないと、いじめの被害から子供(生徒)を守らなかった責任を学校(学校を設置している者、例えば県や市町村等)が取らなければならなくなります。
いじめの対応について内容証明を通知を学校に送付しても尚、いじめに対する対策を学校が取らなかった場合には「安全配慮義務違反」と認められる可能性が高くなるでしょう。
※学校がいじめの対応をしなかった事について判例では、次の様に学校に対する「安全配慮義務違反」を認めていますので、一度ご確認下さい。
(ア)悪質かつ重大ないじめは,それ自体で必然的に被害生徒の心身に重大な被害をもたらし続けるものであるから,いじめを阻止しなかった教員らの安全配慮義務違反と被害生徒の自殺との相当因果関係を認めるためには,教員らにおいて当該いじめが被害生徒の心身に重大な危害を及ぼすような悪質かつ重大ないじめである旨の認識があれば,必ずしも被害生徒が自殺することまでの予見可能性があったことを要しないというべきである。
教員らは,遅くともパンツ下げ事件を認識した時点において,Aの心身に重大な危害をもたらすような悪質重大ないじめがあったことの認識を有していたのであるから,教員らの安全配慮義務違反とAの自殺との間には,相当因果関係がある。
(イ)教員の安全配慮義務違反といじめの被害生徒の自殺との相当因果関係を認定するには自殺についての予見可能性が必要であるとの見解に立つとしても,自殺の予見可能性について,内心の動きの予見の立証を被害生徒側に厳格に求めると,いじめによる自殺について加害者に対する責任の追及が著しく困難となるから,少なくとも,通常社会生活上許容できない悪質,重大ないじめが継続し,その結果,被害生徒が精神的に追い詰められていた状況にあることを予見し,又は予見可能であれば,生徒が自殺することの予見可能性があったと認めるのが相当であり,本件についても,教員らにAの自殺についての予見可能性があったことは明らかである。
H19.3.28東京高等裁判所 平成17年(ネ)第5173号損害賠償請求控訴事件より
保護者が子供がいじめをした事について、判例では次の様に「保護者の監督慮義務」を規定していますので、一度ご確認下さい。
※今回の判例では「保護者の監督義務」に関して、子供のいじめの責任を親が負うべき理由がないとして「監督責任」を否定しています。その理由は今回のいじめに関して、当該生徒の素行の悪さについて学校から連絡を受けていなかった事で子供がいじめを行うと予見する事はできないと判断しています。
そうすると,一審被告A両親において,一審被告Aの問題行動を認識することが可能であったにもかかわらず,監督義務を怠ったと認めることはできず,本件の全証拠によっても,この結論を覆すに足る事実は認められない。したがって,一審被告A両親が一審原告Aに対して民法709条に基づく損害賠償責任を負うとは認められない。
事件番号令和2(ネ)16損害賠償等請求控訴事件、同付帯控訴事件より
内容証明を使って学校や相手保護者へ通知する事によって、学校でいじめがあった事(具体的な内容)と「自分の子供がいじめをしていた事(併せて学校に既に相談・報告済である事)」を証明する事が可能となるでしょう。
いじめの被害を受けていた時期の証明、いじめの重大さの証明
子供がいじめの被害を受けて、その後すぐに内容証明でいじめへの対応をする様に学校へ送付した場合、内容証明通知と併せて「配達証明」を利用する事で「配達した時期」が証明される事になります。
これにより、いじめの被害を学校へ連絡(相談)した時期が配達した時期によって証明される事になります。具体的には内容証明(配達証明)を利用した日以降でもいじめの被害が続いていた場合、内容証明を利用した日が1年前である場合、現在もいじめの被害が続いているのであれば1年間いじめの被害が続いていると想定される事になります。
その間に何も対応がなされていないのであれば、前述の学校の安全配慮義務違反が認められる可能性が高くなるでしょう。
さらにこの具体例において、いじめの被害によって1年間不登校になっていた場合には、文部科学省が制定している「いじめ重大事態に関するガイドライン」における「不登校重大事態」として認められる可能性が高くなります。
まとめ いじめの被害を最小限にする為に
いじめの被害は分かりづらい為、子供のいじめ被害が後になって発覚する事が少なくありません。また、子供は親に「いじめられている事」を言いにくいので、酷くなって判明する事が多いです。
この様な場合には正確にいじめが起きた時期を調べる事が難しく、きちんと時系列でまとめて学校に対応をお願いする必要があります。
ほとんどの学校で「いじめ」に対して迅速に対応を進めてくれるのですが、中には責任から逃れようとする学校も実際にはあります。
話合いで進めも「知らない・聞いていない」と逃げる学校に対して、書面で対応を求める事によって「相談内容が形として残る」のでいじめ対策として有効な手段となるでしょう。
特に、内容証明の性質を利用していじめの被害を時系列としてまとめる事が可能です。
- 学校にどの様な対応を依頼したのか?
- いつ依頼したのか?
- 相手側保護者に「いじめの実態」は伝えてあるのか?
- どんないじめがされてきたのか(してきたのか)?
本来であれば学校に相談(話し合い)した時点で相手側保護者に「いじめの実態」を報告する事やいじめの実態を調査するのが筋ですが、中には「いじめはありません」と認めない学校もあります。
当事務所でも内容証明の作成を承りますので、一度ご相談にいらして頂ければ幸いです。